経審の2年平均・3年平均はどう選ぶべきか|点数から逆算する判断基準

第1章:経審における「2年平均・3年平均」の基本理解

経営事項審査(以下、経審)において、完成工事高の評価は「2年平均」または「3年平均」のいずれかを選択する仕組みになっています。この選択は一見すると単純なものに見えますが、実際には経審の点数に大きな影響を与える重要な判断要素です。

まず押さえておくべきポイントは、「どちらも自動的に決まるものではなく、申請時に任意で選択する」という点です。つまり、企業側が戦略的に選ぶことができる数少ない“調整可能な項目”の一つと言えます。

具体的には、直近2年間の完成工事高の平均を取るのが「2年平均」、直近3年間の平均を取るのが「3年平均」です。当然ながら、どちらを選ぶかによって評価される売上規模が変わり、結果として経営規模等評価(X点)に影響を及ぼします。

ここで重要なのは、「常に2年平均の方が有利」「安定しているから3年平均が無難」といった単純な話ではないということです。例えば、直近で大きく売上を伸ばしている企業であれば2年平均の方が有利に働く可能性がありますし、逆に売上に波がある場合には3年平均の方が点数を安定させるケースもあります。

また、見落とされがちな重要なポイントとして、「この平均年数の選択は業種ごとに変更することができない」という制約があります。つまり、土木一式では2年平均、建築一式では3年平均といったような使い分けはできず、あくまで会社全体としてどちらか一方を選択する必要があります。

この制約があるからこそ、「どの業種で点数を取りにいくのか」という視点が極めて重要になります。自社が主に受注したい公共工事の種類や、力を入れている業種を明確にした上で、その業種にとって最も有利になる平均年数を選択する必要があります。

したがって、2年平均・3年平均の選択は単なる事務的な判断ではなく、「どの市場で戦うのか」「どの案件を取りにいくのか」という経営戦略そのものと密接に関わる意思決定です。

この点を理解せずに「なんとなく前年と同じ」「顧問に任せているから大丈夫」といった形で選択してしまうと、本来取れるはずだった点数を取りこぼしてしまう可能性があります。

経審は単なる評価制度ではなく、“設計することで結果が変わる仕組み”です。その第一歩として、この2年平均・3年平均の違いと意味を正しく理解することが、点数アップへの土台となります。


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第2章:なぜ「2年平均・3年平均の選択」が重要なのか

2年平均と3年平均のどちらを選ぶか。この論点について、多くの企業は「どちらの方が点数が高くなるか」という視点で考えがちです。しかし、結論から言えばこの考え方は本質的ではありません。

本当に重要なのは、「どちらを選べば自社が取りたい点数に到達できるか」という視点です。

経審の点数は、単に高ければ良いというものではなく、「入札に参加するための基準を満たしているかどうか」が極めて重要になります。例えば、ある自治体の入札に参加するために総合評定値(P点)が一定以上必要である場合、そのラインを超えられるかどうかが最優先事項になります。

つまり、2年平均か3年平均かの選択は、「1点でも高くするためのテクニック」ではなく、「必要な点数を確実に取りにいくための戦略的判断」なのです。

ここで重要になるのが、“逆算思考”です。

まず、自社が今後取りにいきたい公共工事の規模やランクを明確にします。その上で、その入札に必要な経審点数を把握し、自社の現状の点数と比較します。そして、「あと何点必要なのか」を明確にした上で、その差を埋めるために最適な選択を行うという流れになります。

このプロセスを踏まずに、「なんとなく今年は2年平均にしておこう」「前年が3年平均だから今年も同じでいい」といった判断をしてしまうと、本来であれば届いたはずの点数に届かず、結果として入札機会そのものを逃してしまう可能性があります。

また、見逃してはならないのが「業種ごとに平均年数を変えられない」という制約との関係です。

例えば、土木工事では点数を伸ばしたいが、建築工事ではそこまで重視していない場合でも、平均年数の選択は会社全体で一つしか選べません。そのため、「どの業種で勝負するのか」という軸を持たずに選択してしまうと、結果的にどの業種においても中途半端な評価になってしまうリスクがあります。

したがって、平均年数の選択は単独で考えるものではなく、「主力業種」と「取りたい案件」という2つの軸とセットで考える必要があります。

言い換えれば、2年平均・3年平均の選択とは、「点数の最大化」ではなく「勝てる土俵に乗るための設計」と言えます。

この視点を持つことで、経審は単なる年1回の手続きではなく、“受注戦略の一部”として機能し始めます。そして、この設計ができている企業ほど、安定して入札機会を確保し、売上につなげているのが実務上の実感です。

逆に言えば、この選択を軽視している企業ほど、「なぜか入札に参加できない」「思ったより点数が伸びない」といった状況に陥りやすくなります。

だからこそ、2年平均か3年平均かという選択は、単なる数値の問題ではなく、“経営判断そのもの”として捉えることが重要です。

第3章:2年平均を選ぶべきケース

2年平均を選択するべきかどうかは、「直近の業績がどのように推移しているか」に大きく左右されます。結論から言えば、直近の完成工事高が伸びている企業にとって、2年平均は有力な選択肢となります。

具体的には、直近2年間で売上が大きく伸びている場合や、大型工事を受注したことで完成工事高が跳ね上がっている場合が典型です。このようなケースでは、3年平均を選択してしまうと、過去の低い売上が平均値を押し下げてしまい、本来評価されるべき規模が正しく反映されません。

一方で2年平均であれば、直近の実績をよりダイレクトに反映できるため、結果として経営規模等評価(X点)が高くなる可能性があります。

ここで重要なのは、「2年平均=リスクが高い」というイメージを持ちすぎないことです。確かに、売上の変動が大きい企業にとってはブレが出やすい側面はありますが、**成長局面にある企業にとっては、その成長を評価に反映させるための“攻めの選択”**とも言えます。

例えば、これまで年商5,000万円規模だった企業が、直近で1億円規模の工事を受注したようなケースでは、3年平均ではどうしても過去の実績に引っ張られてしまいます。しかし2年平均を選択すれば、その成長をより強く評価に反映させることができ、結果として上位ランクの入札に近づくことが可能になります。

また、今後さらに受注拡大を狙っていく企業にとっては、「これからの実力」を評価に反映させるという意味でも、2年平均は合理的な選択です。特に、新規顧客の開拓や元請案件の増加など、事業のステージが変わりつつあるタイミングでは、その変化を経審にどう反映させるかが重要になります。

ただし、注意点もあります。

2年平均は直近の数値に強く影響されるため、一時的な売上増なのか、継続的な成長なのかを見極める必要があります。単発の大型案件によって一時的に売上が上がっているだけの場合、その翌年に売上が落ちると、今度は逆に評価が下がるリスクもあります。

そのため、2年平均を選択する際には、「この売上水準が今後も維持・拡大できるのか」という視点を持つことが重要です。単なる“過去の結果”ではなく、“今後の戦略”とセットで判断する必要があります。

まとめると、2年平均は「直近の成長を評価に反映させるための選択」です。売上が伸びている企業、今後さらに受注を拡大していく企業にとっては、点数を引き上げる有効な手段となります。

ただし、その効果を最大化するためには、「一時的な数字に惑わされないこと」と「今後の事業展開との整合性を取ること」が不可欠です。

この点を踏まえて選択できれば、2年平均は単なる制度上の選択ではなく、“攻めの経営判断”として機能します。

第4章:3年平均を選ぶべきケース

3年平均を選択するべきかどうかは、「売上の安定性」と「リスクの取り方」に大きく関係します。結論から言えば、売上に波がある企業や、直近の業績がやや落ちている企業にとって、3年平均は非常に有効な選択肢となります。

2年平均が直近の実績を強く反映する“攻めの選択”であるのに対し、3年平均は過去3年間の数値を均すことで、評価を安定させる“守りの選択”と言えます。

例えば、直近で売上が落ちている場合に2年平均を選択すると、その影響をダイレクトに受けてしまい、経営規模等評価(X点)が大きく下がる可能性があります。一方で3年平均を選択すれば、過去の比較的良い実績も含めて評価されるため、点数の下落を緩和することができます。

また、建設業では受注状況によって売上が大きく変動することは珍しくありません。特に元請比率が高くない企業や、案件単位で売上が構成されている企業の場合、年度ごとのブレはどうしても発生します。このような企業にとっては、2年平均でそのブレをそのまま評価に反映させるよりも、3年平均で平準化した方が、結果として安定した点数を確保しやすくなります。

さらに重要なのは、「入札参加資格を安定的に維持する」という観点です。

経審の点数は一度上がれば終わりではなく、その後も継続的に一定水準を維持していくことが求められます。仮に2年平均で一時的に高い点数を取れたとしても、その翌年に売上が落ちてしまえば、今度は点数が大きく下がり、今後の入札に影響が出る可能性もあります。

その点、3年平均は急激な上下動を抑えることができるため、「安定して入札に参加し続ける」という戦略を取る企業にとっては非常に相性が良い選択です。

また、すでに一定の入札ランクに到達しており、「これ以上無理に点数を上げる必要はないが、維持はしたい」というフェーズの企業にとっても、3年平均は合理的です。この場合、無理に2年平均で上振れを狙うよりも、安定した評価を確保する方が経営としては健全です。

ただし、3年平均にも注意点はあります。

それは、「成長の反映が遅れる」という点です。直近で売上が大きく伸びている場合でも、過去の低い実績が平均値に残るため、せっかくの成長が点数に十分反映されない可能性があります。そのため、成長フェーズに入っている企業が3年平均を選び続けていると、本来狙えるはずの上位ランクに届かないという機会損失が生じることもあります。

したがって、3年平均は単なる“安全策”ではなく、「どの水準を安定的に維持したいのか」という明確な戦略のもとで選択することが重要です。

まとめると、3年平均は「点数を安定させ、リスクを抑えながら入札機会を確保するための選択」です。売上に波がある企業や、現状のランクを維持したい企業にとっては、非常に有効な手段となります。

このように、2年平均と3年平均は単なる制度上の違いではなく、「攻めるのか、守るのか」という経営判断の違いそのものです。そして、この判断を適切に行うことが、継続的な受注につながる土台となります。

第5章:【最重要】「取りたい点数」から逆算する判断思考

ここまで、2年平均と3年平均それぞれの特徴を見てきましたが、最終的な結論として最も重要なのは、「どちらが有利か」ではなく**「どちらを選べば目標とする点数に届くのか」**という視点です。

経審の本質は、“点数を取ること”そのものではありません。あくまで、入札に参加し、受注につなげるための手段です。したがって、平均年数の選択も「高い方を選ぶ」という発想ではなく、「必要な点数に到達するための選択」として考える必要があります。

ここで必要になるのが、“逆算思考”です。

まず最初に行うべきは、自社が今後取りにいきたい公共工事の水準を明確にすることです。具体的には、「どの自治体で」「どの業種で」「どのランクの工事を取りたいのか」を整理します。

次に、その入札に必要な経審点数(総合評定値P点)を把握します。自治体ごとに基準は異なりますが、おおよその目安を掴むことは可能です。

その上で、自社の現在の経審点数と比較し、「あと何点必要なのか」を明確にします。この“差分”を把握することが、すべての出発点になります。

そして初めて、「2年平均と3年平均のどちらを選ぶべきか」という判断に入ります。

例えば、あと数点で目標ラインに届く場合には、より点数が伸びる可能性のある選択(多くの場合は2年平均)を検討する価値があります。一方で、すでに基準点をクリアしている場合には、無理に点数を追いにいくのではなく、安定性を重視して3年平均を選択する方が合理的なケースもあります。

このように、「現状」と「目標」と「差分」を明確にした上で選択することが、最も再現性の高い判断方法です。

さらに重要なのが、「業種ごとに平均年数を変えられない」という制約との向き合い方です。

例えば、複数業種で経審を受けている企業の場合、すべての業種で最適な選択をすることはできません。そのため、「どの業種で点数を取りにいくのか」という優先順位を明確にする必要があります。

ここで中途半端な判断をしてしまうと、どの業種においても点数が伸びきらず、結果として競争力を失うリスクがあります。逆に、「この業種で勝つ」と決めてしまえば、その業種に最も有利な平均年数を選択するというシンプルな判断が可能になります。

つまり、平均年数の選択とは、単なる計算上の有利不利ではなく、「どこで戦うのか」を決める意思決定でもあるのです。

実務上よく見られるのが、「前年と同じでいい」「なんとなく安全そうだから3年平均」といった判断です。しかし、このような判断では、経審を“受けているだけ”の状態になってしまい、本来の目的である受注にはつながりません。

経審は、きちんと設計すれば結果が変わる制度です。そして、その設計の出発点が「取りたい点数からの逆算」です。

まとめると、2年平均か3年平均かの選択は、「どちらが高いか」で決めるものではありません。
**「どの点数を取りにいき、そのためにどちらが適しているか」**で決めるものです。

この視点を持つだけで、経審の使い方は大きく変わります。そしてそれは、そのまま受注戦略の質の向上につながっていきます。

第6章:実務でよくある判断ミス

2年平均と3年平均の選択は、制度としてはシンプルですが、実務上は多くの企業が判断を誤っているポイントでもあります。そしてその多くは、難しい問題というよりも、「考え方のズレ」から生じています。

まず最も多いのが、「とりあえず直近が高いから2年平均を選ぶ」というケースです。

確かに、直近の完成工事高が高ければ2年平均の方が有利になる可能性はあります。しかし、その判断が「なぜその点数が必要なのか」という目的と結びついていなければ、単なる数値の追いかけに過ぎません。

結果として、点数は上がったものの、実際にはその点数帯の入札に参加していない、あるいは参加しても勝てないという状況に陥ることも少なくありません。これは、“点数を取ること”が目的化してしまっている典型例です。

次に多いのが、「顧問任せで戦略が存在しない」というケースです。

税理士や行政書士に経審の手続き等を依頼している企業は多いですが、その中で「平均年数の選択まで含めて戦略的に検討しているか」というと、必ずしもそうではありません。実務では、「前年と同じで処理しておきますね」といった流れで進んでしまうことも珍しくありません。

もちろん手続き自体は問題なく完了しますが、それでは“最適な結果”にはなりません。経審は提出すれば終わりではなく、「どう設計するか」で結果が変わる制度だからです。

さらに重要なのが、「シミュレーションをしていない」という問題です。

2年平均と3年平均のどちらが有利かは、実際に数値を当てはめて比較すればある程度見えてきます。しかし、この比較を行わずに感覚で選択してしまうケースが非常に多いのが実情です。

例えば、「なんとなく3年平均の方が安全そう」「去年も2年平均だったから今年も同じでいい」といった判断は、一見合理的に見えて、実は大きな機会損失を生んでいる可能性があります。

また、見落とされがちなのが、**「タイミングの問題」**です。

経審は決算内容をベースに評価されるため、いつ申請するか、どの決算を使うかによっても結果が変わります。例えば、売上が大きく伸びた決算を反映させるタイミングを逃してしまうと、本来より低い評価で申請することになりかねません。

このように、平均年数の選択は単独で存在するものではなく、「決算」「申請時期」「今後の受注計画」といった複数の要素と連動しています。この全体像を見ずに部分的に判断してしまうことが、ミスの大きな原因となります。

総じて言えるのは、これらのミスはすべて「戦略不在」から生じているという点です。

逆に言えば、**「取りたい点数」「狙う業種」「現在の立ち位置」**を明確にした上で判断していれば、これらのミスはほぼ防ぐことができます。

経審は難しい制度ではありますが、ポイントを押さえれば“再現性のある結果”を出すことが可能です。そして、その再現性を高めるために最も重要なのが、こうした典型的なミスを事前に理解し、避けることです。

第7章:まとめ|平均年数の選択は「戦略」で決まる

ここまで見てきたように、2年平均と3年平均の選択は単なる制度上の違いではなく、経審の点数、ひいては受注戦略に直結する重要な判断です。

2年平均は、直近の成長を評価に反映させる“攻めの選択”。
一方で3年平均は、売上のブレを抑え、安定した点数を確保する“守りの選択”。

どちらが優れているというものではなく、自社の状況と目的によって最適解は変わります。

そして最も重要なのは、「どちらが高いか」ではなく、**「どちらを選べば取りたい点数に届くのか」**という視点です。

経審はあくまで手段であり、目的は公共工事の受注です。したがって、平均年数の選択も「点数を上げるため」ではなく、「入札に参加し、勝てる土俵に立つため」に行うべきものです。

そのためには、まず自社がどの業種で、どのレベルの案件を取りにいくのかを明確にし、必要な点数を把握すること。そして現状とのギャップを整理した上で、その差を埋めるための手段として2年平均・3年平均を選択する。この順番が非常に重要になります。

また、業種ごとに平均年数を変えられないという制約がある以上、「どの業種で勝つのか」という意思決定も避けては通れません。すべてを取りにいくのではなく、軸を定めることが結果的に点数の最適化につながります。

実務上は、「前年と同じ」「なんとなく安全そう」といった理由で選択されているケースも少なくありません。しかし、その積み重ねが数点、十数点という差を生み、最終的には入札に参加できるかどうかという大きな差につながります。

経審は、“ただ受けるもの”ではなく、“設計するもの”です。

2年平均と3年平均の選択は、その設計の中でも特にシンプルでありながら効果の大きいポイントです。この判断を適切に行うだけでも、点数は変わり、見える景色は大きく変わります。

ぜひ、「どちらが有利か」ではなく、「どの点数を取りにいくのか」という視点で、自社にとって最適な選択を検討してみてください。

その一つひとつの判断が、着実に受注機会の拡大につながっていきます。


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