「個人事業主(一人親方)」で建設業許可を取得する方法

浜田

こんにちは。社会保険労務士・行政書士の浜田です。

今日は、「個人事業主(一人親方)」で建設業許可を取得する方法について解説します。

そもそも「個人事業主(一人親方)」で建設業許可を取得できるのでしょうか?

よくあるお問い合わせなのですが、

相談者

「個人事業主(一人親方)」で建設業許可を取得することはできるのでしょうか?」

というお話をいただきます。

これについての答えは、

はい、できます

です。ただその前に、個人事業主と一人親方の違いについて、お話しておきますね。

どちらも、厳密に言えば同じ「個人事業主」です。

しかし、「一人親方」は一人だけの個人事業主であるのに対して、「個人事業主」は従業員さんがいらっしゃいます。その点が相違点ということになります。
※個人事業主であっても、従業員を雇うことは可能です。

ですので、どちらも建設業許可を取得する上では、同じ「個人事業主」として取扱うことになり、どちらも「個人事業主」として建設業許可を取得することが可能です。

建設業許可取得の要件はどうなりますか?

では、「建設業許可」を取得する上での許可要件はどうなりますでしょうか?

結論から申し上げますと、法人の場合と同じです。

ですので、

(1) 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を備えていること
(2) 適切な社会保険に加入していること
(3) 専任の技術者がいること
(4) 請負契約に関して誠実性があること
(5) 請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用があること
(6) 欠格要件等に該当しないこと

の6つをクリアすることができれば、建設業許可の取得をすることができます。

順を追ってみていきます。

浜田

※特に⑴、⑶が許可を取得する上で、ネックになることが多いです。


(1) 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を備えていること(法第 7 条第 1 号、規則第 7 条第 1 号)

こちらは、俗に言う「経管(けいかん)」と呼ばれるものになります。
※今は、「常勤役員等」というのが正しいです。

そして、許可を受けようとする者は、次のいずれかに該当していることが必要です。

常勤役員等に一定の経営業務の管理経験等があること
個人である場合においてはその者又は支配人のうち 1 人が次のいずれかに該当すること。
ア 建設業に関し(許可を受けようとする建設業以外も可。以下同じ。)5 年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
イ 建設業に関し 5 年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
ウ 建設業に関し 6 年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者

とありますが、基本的に個人事業主で利用できるのは「ア」と「ウ」になります。

「ア」については、法人も含め、一番オーソドックスな形です。
個人事業主としては、個人事業主でご自身が5年以上営業をしていれば、原則要件を満たします。また、「支配人」とありますが、こちらは個人事業主でも支配人の登記をすることができますので、その登記している支配人自身が、同じく5年以上個人事業主等の経営経験があれば、支配人を常勤役員等として、建設業許可を取得することができます。

「ウ」については、少し裏ワザ的要素になるのですが、これについては例えば、個人事業主である親と一緒に従業員として活動していた子が代替わりする際等に、「子自身」を常勤役員等とすることで、建設業許可を取得することができる可能性があるというものになります。

そのため、事例に応じて、適切な要件で許可を取得する必要があります。

(2) 適切な社会保険に加入していること(法第 7 条第 1 号、規則第 7 条第 2 号)

許可を受けようとする者は、適用除外になる場合を除いて、適切な社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)に加入していなければなりません。

個人事業主の場合は、従業員が親族であるか否かといったことや従業員の人数といった状況に応じて加入しなければならない社会保険が変わってきますので、注意する必要があります。

基本的な考え方は、下記のとおりです。

健康保険・厚生年金保険…常勤の従業員が 5 人以上いる場合に限り、加入が必要。

雇用保険…次のいずれにも該当する労働者が 1 人以上いる事業者は加入手続きが必要です。
(ア) 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれる
(イ) 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上である
※法人の役員や個人事業主は加入しません。

(3) 専任の技術者がいること(法第 7 条第 2 号)

許可を受けて建設業を営もうとするすべての営業所には、「専任の技術者」を置くことが必要です。
⇒ 所属する営業所に常時勤務する者でなければなりません。したがって、名義だけの者や常識上通勤不可能な者は除きます。また、建設業の他業者の技術者、管理建築士、宅地建物取引士等、他の法令により専任性を要するとされる者と兼ねることはできません。ただし、同一業者で同一の営業所である場合は兼ねることができます。

こちらについては、資格や学歴、実務経験に応じて判断することになります。

(4) 請負契約に関して誠実性があること(法第 7 条第 3 号)

個人である場合は本人又は支配人等が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です。
「不正な行為」とは、請負契約の締結又は履行に際して詐欺・脅迫・横領等法律に違反する行為をいいます。
「不誠実な行為」とは、工事内容・工期等について請負契約に違反する行為をいいます。
なお、建築士法、宅地建物取引業法の規定により不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から 5 年を経過しない者は、誠実性の要件を満たさないものとして取り扱います。

(5) 請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用があること(法第 7 条第 4 号)

倒産することが明白である場合を除き、申請時において下記に掲げる要件を備えていること。

次のいずれかに該当すること。
① 自己資本の額が 500 万円以上であること。
② 500 万円以上の資金を調達する能力を有すること。
③ 許可申請の直前過去 5 年間許可を受けて継続して建設業を営業した実績を有すること。

(6) 欠格要件等に該当しないこと(法第 8 条)

下記のいずれかに該当する場合は、許可を受けられませんので注意が必要です。
太文字は、下記の中でも該当することが比較的多いケースです。

① 許可申請書又はその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、又は重要な事実の記載が欠けているとき
② 個人にあってはその本人又は支配人等が、次の要件に該当しているとき
ア 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者又は破産手続開始決定を受け復権を得ない者
イ 不正の手段により許可を受けたこと等により、その許可を取り消され、その取消しの日から 5 年を経過しない者
ウ 許可の取消しを免れるために廃業の届出をしてから 5 年を経過しない者
エ 建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、あるいは危害を及ぼすおそれが大であるとき、又は請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止期間が経過しない者
オ 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から 5 年を経過しない者
カ 次の法律に違反し、又は罪を犯したことにより罰金刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から 5 年を経過しない者
(ア) 建設業法
(イ) 建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、職業安定法、労働者派遣法の規定で政令で定めるもの
(ウ) 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
(エ) 刑法第 204 条(傷害)、第 206 条(現場助勢)、第 208 条(暴行)、第 208 条の 2(凶器準備集合及び結集)、第 222 条(脅迫)又は第 247 条(背任)の罪
(オ) 暴力行為等処罰に関する法律の罪
キ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第 2 条第 6 号に規定する暴力団員、又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から 5 年を経過しない者(以下暴力団員等という。)
ク 暴力団員等が、その事業活動を支配する者
刑の執行猶予を受けている者は「刑に処せられた者」に該当します

ということで、以上の要件をクリアできれば、建設業許可を個人事業主(一人親方)であったとしても取得することができます。

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当事務所について

当事務所は、1級土木施工管理技士所有の行政書士による行政書士業界では珍しい「建設業専門」の行政書士事務所です。また、社会保険を熟知している建設業界に強い社会保険労務士事務所でもあります。

建設業「許可」専門でやっているような書類代行だけやっている先生より、「建設業に携わるのはどのような方で、何故そもそもその人たちが必要なのかといった」工事現場を通して肌感覚で感じた経験のあることで、様々な事例や相談に柔軟に対応できる元市役所職員(技術職)で現場の監督員経験もある行政書士がフットワークよく丁寧に対応させていただきます。

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✅ 当事務所は、オンライン等での対応も可能です。多少の資料等のやり取りはあると思いますが、必要に応じてオンラインで対応させていただくことも可能です。 

✅ 「顧問契約を結んでいただけるお客様」については、新規許可及び業種追加の際の報酬は「半額」になります。※問い合わせ多数のため、早めに締め切る可能性がございます。

✅ もちろん、社会保険労務士としての契約だけでも全く問題ございません。建設業界に精通し、業務特化していることから建設業に関する最適なアドバイスをさせていただきます。

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※単純に建設業許可といっても、近年の法改正で社会保険加入が義務化されていたりしています。そのため、社会保険を知らない行政書士が建設業許可申請を行うと、思わぬとばっちりを食らう可能性があります
また、現場のことを理解していない行政書士が建設業許可の手続きを行うと、後々、業種の追加や公共工事に参入する際等に思わぬ問題が生じる可能性がございます。
⇒当事務所は、上記のとおり現場のことも社会保険のことも熟知しているため、思わぬトラブルを事前に回避することができますので、ご安心ください。

埼玉県の志木市・新座市・朝霞市・和光市・さいたま市・富士見市・所沢市・三芳町・戸田市・蕨市・川口市・ふじみ野市・川越市・飯能市・狭山市・入間市・鶴ヶ島市・日高市・坂戸市・東松山市・毛呂山町・鳩山町・川島町・上尾市・桶川市・北本市(その他埼玉県・東京都・千葉県の市区町村のお客様も、一度ご相談ください。)で建設業に関すること(建設業許可、更新、業種追加、事業年度終了報告書、建設キャリアアップシステム、人事労務、助成金、補助金)なら社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所へ

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