令和2年10月の建設業法の改正等を受けて、「下請業者」が知っておくべきこと

こんにちは。社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所の浜田です。

今日は、令和2年10月の建設業法の改正等を受けて、「下請業者」が知っておくべきことについてお話ししようと思います。

近年の法改正等により様々な施策が始まりました。

背景について

背景にあるのが、
・60歳以上の高齢者(84.4万人、26.0%)は、10年後には大量離職が見込まれる。一方、それを補うべき若手入職者の数は不十分。
・給与は建設業全体で上昇傾向にあるが、生産労働者(技能者)については、製造業と比べ低い水準。
・建設業生産労働者(技能者)の賃金は、45~49歳でピークを迎える。体力のピークが賃金のピークとなっている側面があり、マネジメント力等が十分評価されていない。
・社会保険の加入は一定程度進んでいるが、下位の下請になるほど加入率は低く、さらに
踏み込んだ対策が必要。
・建設業は全産業平均と比較して年間300時間以上長時間労働の状況。
・他産業では当たり前となっている週休2日もとれていない。
といったことです。

改正労働基準法について

改正労働基準法における時間外労働規制が、中小企業については2024年4月より適用になっており、2024年4月からは、たとえ36(労使)協定(時間外労働や休日労働をしてもいいよという使用者と労働者の協定のことです)を締結したとしても、時間外労働に上限規制がされるため、何時間働かせても残業代だけしっかり払えばいい、みたいな考え方ができなくなります(ちなみに遵守しない場合、懲役刑等を課せられる可能性もあります。建設業法上、役員等の懲役刑は、「建設業許可の取消対象」にもなりますので要注意です。)。

※上記に対する私個人の見解は、やはり元請や発注者の意識が変わらなければ、建設業界の長時間労働はなくならないと考えています。

下請業者は、いつどんな時であれ、元請に呼ばれれば行かざるを得ないケースも多数あるのが現状です。断れば、今後仕事をいただけない可能性もあるからです。
そうならないように「脱下請」をしていくのも一つの手法だと思います。元請に会社が成長できれば、自社で工事等を取っていくことができるようになるため、工程管理を含め自社で対応することができますし、なにより仕事の内容も選べるようになるため突貫工事は断るといった権限も生じるため会社にとっては大きなメリットになると思います。

併せて、建設業界を変えていくためには、やはり元請や発注者が無理のない工期を適正に提示することが大切なのだと感じています。

工期の設定について

そんな話もあり、今回の改正には適正な工期設定の責務が発注者には課されていますし、著しく短い工期による請負契約の締結は禁止されました。以下、法律の抜粋です。

※改正品確法(令和元年6月14日に公布・施行)により、働き方改革の推進として以下のことが責務とされました。
○発注者の責務
・適正な工期設定 (休日、準備期間等を考慮)
・施工時期の平準化 (債務負担行為や繰越明許費の活用等)
・適切な設計変更(工期が翌年度にわたる場合に繰越明許費の活用)
働き方改革の推進
○受注者(下請含む)の責務
・適正な請負代金・工期での下請契約締結

また、入契法・建設業法の改正(令和元年6月12日に公布・令和2年10月1日施行)により下記が定められました。
○工期の適正化
・中央建設業審議会が、工期に関する基準を作成・勧告
・著しく短い工期による請負契約の締結を禁止(違反者には国土交通大臣等から勧告・公表)<建設業法>
・公共工事の発注者が、必要な工期の確保と施工時期の平準化のための措置を講ずることを努力義務化<入契法>
○現場の処遇改善
・社会保険の加入を許可要件化<建設業法>
・下請代金のうち、労務費相当については現金払い<建設業法、入契法>

著しく短い工期についての考え方

・著しく短い工期の判断の視点
① 契約締結された工期が、「工期基準」で示された内容を踏まえていないために短くなり、それによって、下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することになっていないか。
② 契約締結された工期が、過去の同種類似工事の工期と比較して短くなることによって、下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することになっていないか。
③ 契約締結された工期が、下請負人が見積書で示した工期と比較して短い場合、それによって、下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することになっていないか。

・第196回国会(常会)で成立した「働き方改革関連法」による改正労働基準法に基づき、令和6年4月1日から、建設業者に関しても、災害時の復旧・復興事業を除き、時間外労働時間の罰則付き上限規制の一般則が適用されることを踏まえ、当該上限規制を上回る違法な時間外労働時間を前提として設定される工期は、例え、元請負人と下請負人との間で合意している場合であっても、「著しく短い工期」と判断される。

・ 「著しく短い工期」の禁止は、当初の契約締結後、当初の契約どおり工事が進行しなかったり、工事内容に変更が生じた際、工期を変更するために変更契約を締結する場合についても適用される。
・工期の変更時には紛争が生じやすいため、紛争の未然防止の観点から、当初の契約の際、建設工事標準下請契約約款第17条(元請負人は、工期の変更をするときは、変更後の工期を建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間としてはならない。)を明記しておくことが重要である。

※元請から不適切な工期を指示された場合は、しっかりと協議できる体制があればいいと思います。少なくとも上記のことを知っておくだけでも、元請に対する接し方を変えられると思っています。

法律が変わっても、「運用する人」が変わらなければ状況は何も変わりません。
運用する発注者や元請業者が、適切に対応してくれるような業界に変わるといいですよね。

参考資料:国土交通省資料

【編集後記】

建設業者様からの人事労務・社会保険等の相談を最近数多くいただいております。

現場のことに専念していただくため、様々なアドバイス等させていただいております。

令和3年8月より正式に社会保険労務士事務所となりますので、建設業許可(新規・業種追加・更新許可・事業年度終了報告書等)と併せてご利用ください。どうぞよろしくお願いいたします。

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※単純に建設業許可といっても、近年の法改正で社会保険加入が義務化されていたりしています。そのため、社会保険を知らない行政書士が建設業許可申請を行うと、思わぬとばっちりを食らう可能性があります
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⇒当事務所は、上記のとおり現場のことも社会保険のことも熟知しているため、思わぬトラブルを事前に回避することができますので、ご安心ください。

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