こんにちは。
社会保険労務士・行政書士の浜田です。
今日は、「公共工事に参加するためのステップ」などについて、解説していきます。
この記事を読むことで、公共工事(入札)に参加するには、何が必要なのか、大まかに把握することができるようになります。
はじめに:公共工事に参入するメリットとは?
建設業許可を取得した後、さらなる成長を目指すなら、公共工事への参入を視野に入れるべきです。公共工事は、国や自治体が発注するため、民間工事にはない安定性と信用力向上のメリットがあります。また、入札制度を活用することで、適正な競争の中で受注の機会を得ることができます。ここでは、公共工事に参入することで得られる具体的なメリットを解説します。
① 安定した受注と資金繰りの良さ
公共工事の最大のメリットは、継続的な受注が見込めることです。国や自治体が発注する工事は予算に基づいて行われるため、年間を通じて一定数の案件が発注されるのが特徴です。これにより、民間工事のように景気の影響を受けにくく、企業経営の安定につながります。
さらに、公共工事では支払い条件が明確であり、契約に基づいて確実に支払われる点も大きな魅力です。民間工事の場合、発注者の経営状況に左右されるリスクがありますが、公共工事ではその心配がほぼありません。一般的に支払いサイト(入金までの期間)はやや長めですが、それを考慮した資金繰りを行えば、安定したキャッシュフローを維持できます(工事着手前に、前金をもらえる場合もあります)。
② 会社の信用力向上と新規取引の拡大
公共工事を受注することで、会社の信用力が向上するのも大きなメリットです。国や自治体と取引を行うことは、企業の信頼性の証明となり、金融機関などからの評価も高まります。その結果、銀行融資が受けやすくなったり、取引先が増えたりするといったメリットが生まれます。
また、「公共工事を手掛けている」という実績は、新規顧客の獲得にも効果的です。民間企業の発注者に対しても、「官公庁と取引している=しっかりとした経営基盤がある」と評価されるため、新しい案件の獲得につながる可能性が高くなります。
③ 参入方法が多様で、経験に応じた選択が可能
公共工事に参入する方法は、大きく分けて「元請業者として受注する」方法と、「下請業者として関わる」方法の2つがあります。
元請業者としての参入は、経営事項審査(経審)を受け、自治体の入札資格を取得する必要があります。その分、工事全体の管理を行えるため、利益率が高くなる傾向にあります。ただし、元請業者としての責任も大きく、発注者との交渉や施工管理能力が求められます。
一方で、下請業者としての参入は、元請企業から工事の一部を請け負う形になるため、比較的参入しやすいのが特徴です。特に、これから公共工事を始める企業にとっては、まずは下請けとして実績を積み、その後に元請けを目指すのが現実的な戦略になります(とはいえ、いきなり入札にチャレンジすることも可能です)。
④ 公共工事の入札方式を理解し、適切な戦略を立てる
公共工事(入札)の受注には、基本的に「一般競争入札」と「指名競争入札」の2種類の方式があります。
一般競争入札:資格要件を満たせば、どの業者でも参加できる方式。公平性が高いが、価格競争が激しく、適正価格での落札が難しいこともある。
指名競争入札:発注機関が特定の業者を選び、その中で競争を行う方式。事前に信頼関係を築いておくことが重要で、比較的安定した受注が見込める。
また、大規模工事では「総合評価方式」が採用されることもあります。これは、価格だけでなく技術力やノウハウも評価基準に含まれる入札方式で、単純な価格競争を避けられるメリットがあります。ただし、その分、企業としての技術力や実績が重要視されるため、計画的に準備を進めることが求められます。
経営事項審査(経審)の取得が必須!
経審とは?
公共工事の入札に参加するためには、「経営事項審査(経審)」を受けることが必須です。経審とは、建設業者の経営状況や技術力を数値化し、自治体や国の発注機関が「どの業者に発注できるか」を判断するための審査制度です。経審の結果は「P点」として数値化され、点数が高いほど有利に働きます(とはいえ、自社に適したP点にしておくことが実はめちゃくちゃ大切だったりします…)。公共工事を受注するためには、この経審で一定の評価点を取得し、各自治体の「入札参加資格登録」に申請する必要があります。
また、経審の結果は、元請業者が下請業者を選定する際の指標としても使われることがあります。そのため、経審のスコアが高いほど、公共工事だけでなく民間工事でも信用力が増し、受注の機会が広がるというメリットがあります。
経審の評価項目と配点のポイント
総合評定値(P点)は、以下の5つの要素で構成され、それぞれにウェイトが設定されています。
完成工事高(X1):業種別の年間平均完成工事高を評価します。直近の2期または3期の平均値を基に算出され、工事高が高いほど高得点となります。
自己資本額および平均利益額(X2):自己資本額と2期平均の利益額を評価します。財務の健全性を示す指標であり、自己資本が多く、利益が高いほど高得点となります。
経営状況(Y):企業の財務状況を8つの指標(純支払利息比率、負債回転期間、総資本売上総利益率、売上高計上利益率、自己資本対固定資産比率、自己資本比率、営業キャッシュフロー、利益剰余金)で評価します。
技術力(Z):技術職員数と元請完成工事高で評価されます。技術職員数は、一級建築士や一級施工管理技士、基幹技能者、二級技術者、その他技術者の人数に応じて点数が割り当てられます。元請完成工事高は、許可を受けた建設業の種類毎の直前2年又は直前3年の年間平均元請完成工事高を評点テーブルに当てはめて評価します。
社会性等(W):労働福祉の状況、営業継続年数、防災活動への貢献、法令遵守の状況、経理の適正性、研究開発の状況、建設機械の保有状況、国際標準化機構(ISO)の規格取得状況など、多岐にわたる項目で評価されます。各項目の合計点が高いほど、社会的信用度が高いと判断されます。
点数を上げるための具体的な対策
- 技術者の資格取得支援
技術力(Z)の評価を高めるためには、施工管理技士の資格取得を支援することが効果的です。特に、1級施工管理技士を増やすことで、経審のスコアが大きく上がります。
また、そのために社員に対して資格取得の研修費用を補助する制度を設けるのも一つの手です。資格取得が難しい場合は、すでに資格を持つ技術者を雇用することで即時スコアアップを狙うことも可能です。
- 施工実績の積み上げ
施工実績は、経審の点数に大きく影響します。公共工事に初めて参入する場合、まずは下請業者として工事を受注し、施工実績を増やすのも現実的な戦略です。
また、民間工事の実績も経審の評価対象となるため、売上高を伸ばしつつ、公共工事向けの施工経験を積むことが重要です。
- 財務の改善(自己資本を増やすなど)
財務状況の評価を上げるためには、以下の対策が有効です。
自己資本を増やす:会社の資本を増やし、財務の健全性を高める
赤字決算を避ける:継続的に黒字を維持し、利益率を向上させる
借入金を適切に管理する:負債比率を下げ、財務リスクを軽減する
特に、新規参入の企業は、自己資本が不足しがちなので、増資を検討するのも一つの方法です。
経審のスコアを向上させることで、入札の競争力が高まり、より有利な条件で公共工事を受注できるようになります(とはいえ、先ほども申し上げたとおり、企業によっては、単に点数が高ければいいというものでもありません)。特に、技術者の資格取得や施工実績の積み上げ、財務の健全化は、経審の点数アップに直結するため、計画的に対策を進めることが重要です。
※「経審の点数が高い=必ずしも、プラスには働かない」について、詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
入札参加資格登録の申請手続きと流れ
公共工事の入札に参加するには、建設業許可と経営事項審査(経審)を取得した後、各自治体や発注機関の「入札参加資格登録」に申し込む必要があります。この審査に通過することで、ようやく入札に参加できるようになります。ただし、自治体ごとに審査基準や必要書類が異なるため、事前の準備が重要です。
入札参加資格登録の申請の流れ
① 必要書類の準備
自治体によって提出書類が異なるものの、一般的に以下のような書類が必要になります。
建設業許可証明書(許可番号の記載があるもの)
経営事項審査結果通知書(P点の記載があるもの)
法人登記簿謄本
納税証明書(法人税・消費税・地方税などの納税状況を証明するもの)
監理技術者資格者証の写し
② 各自治体の入札参加資格登録に申し込む
必要書類を準備したら、各自治体の入札参加資格登録に申請します。通常、自治体のホームページで申請受付期間が公表されておりますので、申請スケジュールの確認が重要です。
自治体によって、オンライン申請が可能な場合もありますが、書面での提出が求められるケースもあります。提出方法を事前に確認し、締切までに必ず申請を完了させましょう。
③ 登録が完了すれば入札が可能に
審査に通過すると、自治体の入札資格者名簿に登録され、入札公告が出た際に参加できるようになります。 ただし、経営事項審査の点数や施工実績に応じて、入札できる工事の規模や種類が異なるため、事前に自社の結果状況などを確認することが必要です。
入札参加資格登録申請時の注意点
入札資格を取得前に、どの自治体の入札に参加するかを検討する必要があります。特に、初めて公共工事に参入する建設業者は、エリア選定を慎重に行うことが重要です。
① 地元自治体の案件を狙うべき理由
公共工事には、一般競争入札だけでなく、特定の業者が選ばれる「指名競争入札」があります。指名競争入札では、過去の施工実績や自治体との関係性が評価されるため、地元自治体の案件に積極的に参加することで、指名されやすくなるというメリットがあります。
また、地元の案件を受注することで、移動コストや出張経費を削減でき、利益率を高めることが可能です。特に、遠方の公共工事では利益率が低くなりがちなため、コスト削減の視点を持つことが重要です。
② 施工実績を積むために小規模工事を狙うのも手
公共工事の入札以外でも、公共工事に参加することは可能です。そのため、まずは、各自治体の小規模工事(入札とは、別の制度)を狙うのも一つの手です。
③ 複数の自治体に申請して受注機会を増やす
入札の機会を増やすために、地元自治体だけでなく、逆に近隣の自治体にも入札参加資格を申請することも有効です。
特に、以下のようなケースでは、複数の自治体に申請することを検討すべきです。
地元の案件が少ない場合(公共工事の発注が少ない地域では、複数の自治体に登録することで受注機会を増やせる)
自社の施工エリアが広い場合(事業所や拠点が複数ある場合、広域で入札できるメリットがある)
技術力や施工実績が充実している場合(スキルが高い企業は、競争力を活かして広範囲で受注を狙うことができる)
ただし、複数の自治体に申請する場合、それぞれの申請期限や書類要件が異なるため、管理が煩雑になります。計画的に準備を進め、無理のない範囲で申請を行うことが大切です。
公共工事の契約・請求・施工ルールを理解する
公共工事では、契約・請求・施工に関するルールが明確に定められており、民間工事とは異なるポイントが多くあります。特に、契約形態、支払い条件、施工ルールを正しく理解していないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があるため、事前に押さえておくことが重要です。
① 契約の種類を理解する
公共工事の契約形態は主に以下の2種類に分かれます。
請負契約:一般的な契約形態で、完成した工事に対して報酬が支払われる。工期の遵守や品質管理が求められる。
単価契約:工事内容ごとに単価を設定し、実施した分だけ報酬が支払われる。道路補修や維持管理業務でよく採用される。
② 契約約款を理解する
公共工事の契約では、「公共工事標準請負契約約款」が適用されることが多く、この中には施工遅延時の違約金や契約不適合責任などが規定されています。特に、「履行保証制度」が義務付けられる場合があり、契約の際に保証会社の手続きを求められることもあります。
③ 公共工事特有の支払いサイトに注意
公共工事では、支払いサイト(入金までの期間)が長めに設定されていることもあります。一般的に、検査合格後の請求から40日以内のケースが多いでしょう。そのため、資金繰りを考慮し、短期の運転資金を確保しておくことが重要です。
初めての公共工事をスムーズに進めるためのポイント
初めて公共工事を受注する際は、施工管理のルールや行政の監督体制を把握し、適切に対応することが求められます。特に、契約通りに工事を進めるための管理体制が重要です。
① 施工管理の徹底
公共工事では、品質管理・安全管理などが厳格に求められます。工事現場には主任技術者または監理技術者を配置し、適切な施工計画書を作成し、施工する必要があります。
② 書類の正確な管理と提出
公共工事では、工事完了後に提出する検査書類などが多く、不備があると支払いが遅れる可能性があります。そのため、事前にフォーマットなどを確認し、工事の進捗とともに準備を進めるべきです。
③ 現場検査への対応
公共工事では、工事完了後に行政の担当者による現場検査が行われます。この際、契約内容どおりに施工されているか、基準を満たしているかが細かくチェックされるため、施工記録や写真をしっかりと保管し、スムーズに対応できる体制を整えておくことが大切です。
公共工事は手続きや管理が厳しい反面、適切に対応すれば安定した収益が見込めます。初めての公共工事では、契約や施工ルールをしっかり理解し、計画的に取り組むことが成功の鍵となります。
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建設業「許可」専門でやっているような書類代行だけやっている先生より、「建設業に携わるのはどのような方で、何故そもそもその人たちが必要なのかといった」工事現場を通して肌感覚で感じた経験のあることで、様々な事例や相談に柔軟に対応できる元市役所職員(技術職)で現場の監督員経験もある行政書士がフットワークよく丁寧に対応させていただきます。
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