大手グループ会社が建設業許可を自主返納をした本当の理由

こんにちは。社会保険労務士・行政書士の浜田です。

今日は、建設業法に関する時事について、お話ししようと思います。

大手グループ会社の建設業許可の自主返納について

9月14日に飯田グループホールディングスのアイディホーム株式会社が建設業許可・宅地建物取引業免許を各監督官庁に自主返納したと発表されました。

内容としますと、

上記会社の役員が、道路交通法違反(スピード違反)で執行猶予付き有罪判決を受けていたのにもかかわらず、これを放置していたとのことでした。

そして、当該事実の発覚と同時に上記役員は辞任。翌営業日に監督官庁への報告をしたとのことでした。

では、これが何がマズいのか、何故建設業許可を自主返納(廃業)をしているのか、について建設業法に精通している行政書士として考察します。

建設業法でいう欠格要件について

建設業法第8条に「欠格要件」というものが定められているのですが、

建設業法第8条は以下のような記載で始まります。

「国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあつては、第1号又は第7号から第14号までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。」

そして、例えば今回のケース(アイディホーム㈱のホームページには詳細は書かれていないため、想定にはなります)では、スピード違反ということですので、

道路交通法第118条第1号に記載のある

「第22条(最高速度)の規定の違反となるような行為をした者」

に該当し、

「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」に処する

ため、懲役刑に処せられたのでしょう。
※この場合の懲役刑には執行猶予も含まれることになります。

そして、この懲役刑に該当する場合は、先ほどの建設業法第8条第7号

「禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者」

に該当してしまいます。
※禁錮よりも懲役の方が、罰は厳しいです。

そして、建設業法第29条第1項には、

「国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。」

とあり、その第29条第1項の第2号には

第8条第1号又は第7号から第14号まで(第17条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するに至つた場合」

とあり、これに該当することになりますので、このままいけば取消対象になります。

そこでマズいということで建設業許可の自主返納という名の「廃業」を届け出たということなのでしょう。
※手続き上「返納制度」はないので、「廃業」の形をとっているはずです。

それだけだと、何故、このタイミングで自主返納したのか?となると思いますので、もう少し突っ込んだお話をします。

自主返納した本当の理由について

建設業法第29条の4第2項に

「国土交通大臣又は都道府県知事は、第29条第1項第7号又は第8号に該当することにより建設業者の許可を取り消す場合においては、当該建設業者が法人であるときはその役員等及び当該処分の原因である事実について相当の責任を有する政令で定める使用人に対して、個人であるときは当該処分の原因である事実について相当の責任を有する政令で定める使用人に対して、当該取消しに係る建設業について、5年間、新たに営業(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うものを除く。)を開始することを禁止しなければならない。」

とあり、ここに引っかかった場合は、その当時いた役員「全員」が5年間新たに営業を開始できない方々になってしまい、会社としては大損害を被ることが法律上読むことができます。

さらに同様のお話が、先ほど触れていました欠格要件である建設業法第8条第3号にあり、

「第29条第1項第7号又は第8号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法(平成五年法律第八十八号)第15条の規定による通知があつた日から当該処分があつた日又は処分をしないことの決定があつた日までの間に第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から5年を経過しないもの」

とあり、こちらも該当してしまった場合には、建設業許可を5年間取得できないことになります

そして、第29条本文には

「国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。」

とあり、その中の第29条第1項第8号には

前条第1項各号のいずれかに該当し情状特に重い場合又は同条第3項若しくは第5項の規定による営業の停止の処分に違反した場合」

とあります。

この前条というのは第28条のことを指していますので、

第28条第1項をそのまま全文掲載しますと、

(指示及び営業の停止)
第二十八条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定(第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四、第二十四条の五並びに第二十四条の六第三項及び第四項を除き、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号。以下「入札契約適正化法」という。)第十五条第一項の規定により読み替えて適用される第二十四条の八第一項、第二項及び第四項を含む。第四項において同じ。)、入札契約適正化法第十五条第二項若しくは第三項の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年法律第六十六号。以下この条において「履行確保法」という。)第三条第六項、第四条第一項、第七条第二項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十条第一項の規定に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。特定建設業者が第四十一条第二項又は第三項の規定による勧告に従わない場合において必要があると認めるときも、同様とする。

 建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
 建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。
 建設業者(建設業者が法人であるときは、当該法人又はその役員等)又は政令で定める使用人がその業務に関し他の法令(入札契約適正化法及び履行確保法並びにこれらに基づく命令を除く。)に違反し、建設業者として不適当であると認められるとき。
 建設業者が第二十二条第一項若しくは第二項又は第二十六条の三第九項の規定に違反したとき。
 第二十六条第一項又は第二項に規定する主任技術者又は監理技術者が工事の施工の管理について著しく不適当であり、かつ、その変更が公益上必要であると認められるとき。
 建設業者が、第三条第一項の規定に違反して同項の許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を締結したとき。
 建設業者が、特定建設業者以外の建設業を営む者と下請代金の額が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上となる下請契約を締結したとき。
 建設業者が、情を知つて、第三項の規定により営業の停止を命ぜられている者又は第二十九条の四第一項の規定により営業を禁止されている者と当該停止され、又は禁止されている営業の範囲に係る下請契約を締結したとき。
 履行確保法第三条第一項、第五条又は第七条第一項の規定に違反したとき。

とあり、この第3(三)号がかなり裁量のある条文になっていると思われます。
⇒実際に、過去に「法人税法」等の違反でこの条文に該当したケースも多数あります。

そのため、今回の交通違反に対してこの条文に適用されてしまえば、上記に記載した最悪のケース(新規営業禁止、建設業許可取得不能)になることもありうります。

そこを避けるためにも自主返納したのではないか?と私は考えています。

いずれにしましても、今後の監督官庁の動きにも注目が集まるところです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

このような事例は、御社でも起こりうる可能性は十分あり得るのではないでしょうか?

このような事例に遭遇した時に適切に対処できる行政書士とお付き合いをしていますでしょうか?

私自身は、実際にこれに近い事例にも遭遇し、結果的にはお客様にとって最悪の事態は免れるようにアドバイスをした経験もございます。
※弊所は、建設業のコンサルティング業務も顧問契約の一環として行っております。

建設業許可を単に取得するだけでは不十分なことが、上記の事例からわかるかと思います。

どんどん規制が厳しくなっていく建設業界。

是非、法律や労務管理の運用も時代に沿って行うようにしていきましょう。

弊所、コンサルティング業務はこちら(メインは、労務管理にはなっています)

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